2008年3月22日土曜日

本当に怖いもの

本当に怖いもの
2008/03/22 09:48(四国新聞 2008年3月22日)
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/column/article.aspx?id=20080322000088


本当に怖いもの
2008/03/22 09:48
 「暴動よりも怖かったのは…」。中国チベット自治区ラサで14日に起きた大規模暴動。その発生に遭遇した県出身の女子大学生から話を聞いた。彼女を心底怖がらせたのは暴徒ではなかった。
 チベット民族の群衆から中国人(漢民族)に間違われ、路地裏に連れ込まれそうになった。様子を撮影していた同行者のカメラが奪われた。かくまわれた先では砲撃のような音を何度も聞いた。ホテルに戻る途中、暴徒に襲われ煙を上げる街も見た。 ほんの数時間で街の様子が一変したのだから、怖くないわけがない。でもチベット民族は日本人を狙わないとの確信もあった。自分のカメラは無事だったし、けがなく日本への帰路にも就けた。本当の恐怖はまだ先にあった。
 出国前に立ち寄った上海。NHKのニュースを見ていたら、突然チベットの場面で画面が消えた。現地情報を知るためのウェブサイトは接続できない。それらに代わるように、違和感のある官製ニュースが流れていたという。
 目の前で繰り広げられる暴動は怖いが、矛先が違えばまだ安心できる。暴動そのものの隠蔽[いんぺい]も怖いが、それだって隠す側は「悪」だと宣言するようなものだから分かりやすい。食品に限らず情報開示を偽装するのが最もたちが悪く、最も背筋を寒くする。
 今なおラサには外国メディアは入れず、国連の調査も拒まれている。正確な死者数すら分からない。「危ないところって印象がつくと嫌だな」。チベットの自然と人を愛する彼女の願いがむなしく響く。(四国新聞 2008年3月22日)

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